米国の39銀行協会が業界所有のブロックチェーンネットワーク構築へ
合同会社Fujigoソフトウェアソリューション
M&C Holdings(日本)のメンバー

米国銀行業界は前例のない同盟を目撃しました。39の州銀行協会(State Bankers Associations)が、業界が所有・運用する独自のブロックチェーンネットワーク構築計画を発表しました。この動きは、ブロックチェーンが「技術実験」段階から「本番インフラ」段階へ移行したことを明確に示すだけでなく、ベトナムや日本を含む他の金融市場にも大きな問いを投げかけています。
米国銀行業界史上最大の同盟
PYMNTSによると、39の州銀行協会が共同で業界所有のブロックチェーンネットワーク構築を発表しました。これは、Ethereumなどのパブリックプラットフォームや個別のプライベートソリューションに依存するのではなく、業界全体で分散台帳技術(DLT)インフラに投資する初の事例です。
この同盟の規模は注目に値します。39州は数千のコミュニティ銀行および地域銀行を代表し、これらの組織は米国金融システムの大部分を占めていますが、大手銀行(JPMorgan Chase、Bank of America、Goldman Sachs)との技術競争で取り残されることが多かったのです。
なぜ今、ブロックチェーンなのか?
この決定の背景には3つの主要な動機があります。
第一に、銀行間決済コスト。 従来の correspondent banking システムは依然として高コストで遅く、特に国際送金ではそうです。ブロックチェーンは決済時間をT+2からT+0に短縮し、仲介手数料を削減できます。
第二に、フィンテックからの競争圧力。 Stripe、Ripple、Circleなどの企業はブロックチェーン上に決済インフラを構築し、伝統的な銀行の仲介地位を脅かしています。独自のネットワークを構築することで、銀行は競合他社に依存せずにインフラの制御を維持しようとしています。
第三に、規制コンプライアンス要件。 パブリックブロックチェーン(Ethereum、Solana)はKYC/AML要件やデータ主権を満たすのが困難です。業界所有のプライベートネットワークは、ガバナンス、監査証跡、レガシーシステム(コアバンキング、SWIFT)との統合をカスタマイズできます。
「業界所有」モデル — 過去のプロジェクトとの違い
このプロジェクトの独自性は、集合所有モデル(collective ownership)にあります。テクノロジー企業(RippleNetやJPMorganのOnyxなど)が運用するのではなく、このブロックチェーンネットワークはコンソーシアムまたは協同組合構造を通じて銀行自身が所有します。
同様のモデルは他の業界で成功しています。Visa(会員銀行が所有)、SWIFT(3,500以上の金融機関の協同組合)、FedNow(連邦準備制度のリアルタイム決済インフラ)。銀行ブロックチェーンネットワークは、この論理の次の段階と言えるでしょう。
ベトナムと日本への教訓
ベトナム: ベトナム国立銀行はフィンテックとブロックチェーンのサンドボックスを試験的に導入していますが、主に暗号資産とDeFiに焦点を当てています。米国のプロジェクトは、ブロックチェーンが伝統的な銀行インフラ(銀行間決済、貿易金融、KYC共有)に実用的な用途を持つことを示しています。ベトナムの銀行(Vietcombank、BIDV、Techcombank)は、特に国際決済と貿易金融のために、同様のコンソーシアムブロックチェーンモデルを研究すべきです。
日本: 日本はProject JBAIT(Japan Bankers Association Innovation Team)とRippleとの国際送金連携で先行しています。しかし、米国の39州モデルははるかに大規模であり、アジア銀行協会が学ぶためのテンプレートとなる可能性があります。MUFG、SMBC、Mizuho — 日本の3大メガバンク — は、既存のコンソーシアムを地域レベル(ASEAN、APAC)に拡張することを検討できます。
直面する課題
すべてが順調に進むわけではありません。3つの大きな課題があります。
ガバナンス: 39の協会、規模とニーズが異なる数千の銀行 — プロトコルアップグレード、手数料体系、紛争解決について合意形成は可能か?
レガシーシステムとの統合: コアバンキングシステム(Fiserv、FIS、Jack Henry)はブロックチェーン用に設計されていません。統合コストと時間は数億ドルに達する可能性があります。
規制の不確実性: OCC、FDIC、連邦準備制度は業界所有ブロックチェーンの明確なフレームワークを持っていません。このネットワークが「システム上重要な金融市場ユーティリティ」(SFMU)と見なされ、特別な監督を受ける可能性は?
結論
39の米国銀行協会の同盟は転換点を示しています。ブロックチェーンはもはやスタートアップや暗号資産の技術ではなく、伝統的な銀行の戦略的インフラとなりました。ベトナムと日本にとって、これは競争が「ブロックチェーンを使うべきか」ではなく、「どうすれば取り残されないか」であるという警告です。
出典: 39 State Bankers Groups Join Forces to Build Industry-Owned Blockchain Network — PYMNTS、2026年8月26日